大きな災厄もなく時を刻んできた世界。
陽気も安定し、平和のあふれる大陸。人は平和に暮らしていた。
少しの争いが起ころうとも、
悠久の流れの前にいつしか無意味を悟って消えていった。
天使が彼らの身近にいて、
この世界を見守る存在を忘れさせなかった。
天使の多くは、片言の言葉。
意味の深いような、よく分からないお言葉を発し、
話しているうちにいつの間にか、どこかへ消えてしまう。
幻のように現れては預言をして飛び去る。
時々、普通くらい、私達にも解るくらいの言葉で話す天使もいる。
急には消えない。
いつしか羽ばたいて去って行く。
でも、舞い散ったはずの羽根はどこにも残っていない。
最近、魔獣が増えたそうだ。
魔獣は、浄化すると、天使に戻る。
何者かによって、天使が呪をかけられた姿。
そして最近、天使も増えたそうだ。
比例して増えるのに、不自然はないが。
…昔よく話した天使は、
無事だろうか―
魔獣を浄化する力がすでに目覚めている少年は、
お国主導の魔獣討伐隊の誘いの話を聞きつつも、
単身で、幼い頃よくかよっていた旧神殿へと久しぶりに訪れる。
かつての山崩れによって埋まり、半壊した、神をまつっていた神殿。
いまや魔獣の巣窟と化して、簡単には足を向けられなくなっていた。徘徊する魔獣を浄化しながら、
かつて天使と話した懐かしい場所へたどり着く。
しかし今、そこには、魔獣が鎮座していた。
その大きな力を持った魔獣を、やっとの思いで浄化する。
最後の祈りの瞬間、あたりが強い光に包まれた。収まると、空気が澄み渡り、不穏な気配が全くなくなっていた。
日差しの香りが漂っている。
魔獣のいた場所にはその昔よく話した天使が
昔とおおよそ同じように自分を見つめていた。
そして、予言のような不思議なコトバと、最初の命題を授けると、
その天使は羽根となって消えた。旧神殿から抜け出すまで、一度も魔獣に会わなかった。
もう1匹もいなくなっていたようだ。街に戻って、どうしていいかわからず、
とりあえず信頼している、お城の兵士長に相談する。
以前から少年の大命を感じていた兵士長は
国王と占い師も話しを通し、
天使に従い、命題を成しに旅に出かけるよう促す。自分の運命を知ってしまう予感に恐れながらも、
旅立つ決意をする。
日常とも、親しい友ともしばしの別れ。
まだ若いその青年は、
世界の異変と、つかめぬ命運を探るため、
旅に出ることにした。